トラブル事例1:問題社員の解雇時に逆切れされてしまった!

遅刻や無断欠勤が多く、再三の指導にも従わない社員に、“解雇”を言い渡した企業がありました。社会常識からすれば、当然の話ですが、その社員は、“解雇規程”上の不備や、未払い残業代や未消化有給休暇があることを理由に、解雇の不当性を指摘しながら、多額の“一時金”を要求して来たのです。
残業手当についても、明確な規定を決めていなかった同社では、“請求額”がどこまで膨らむか、経営陣には大きな不安がのしかかりました。“規則”を定める重要性は、決して軽視できないのです。

トラブル事例2:残業手当等に関する規則の不備をついた未払い請求に大慌て!

【トラブル事例1】にもある残業手当は、“未払い”認定を受けた場合、過去3年間にさかのぼって請求されることがあります。
仮に、以下ような会社が、残業代を全く払っていなかったとしたら、3年分遡及払いでどれぐらいの残業代支払を命じられるか計算してみましょう。
 
 《ある企業の前提条件》

   ・社員数60人
   ・社員の平均賃金月額30万円
   ・1ヶ月の所定労働時間170時間
   ・1ヶ月平均残業時間30時間

 ●社員1人当たりの3年間の未払い残業代
   (30万円÷170時間)×1.25×30時間×36カ月=約238万円

 ●社員60人分の3年間の未払い残業代合計
    238万円×60人=約1億4,280万円

この1億4,280万円という金額は、3年分の遡及払い分のみです。当然、将来に渡って割増賃金(上記の例で言えば毎月400万円)を支払わなければなりません。

トラブル事例3:“うつ病社員”を円満退職させたいが…

うつ病のような“心の病気”は、医学的に解明されていない部分が多々残るようです。そのため、時として、『職場復帰可能』の診断書を持って、社員が職場復帰を希望するようなケースも出て来ます。

確かに職場で“働けない”とまでは言えない場合でも、危険な仕事やコミュニケーションが不可欠な職場では、ちょっと無理が残るケースも出ないとは言えません。そんな時どうするか、それは“その時になって考える”のではなく、事前に規則やルールを定めることで準備しなければならないマネジメント・テーマなのです。

トラブル事例4:実態に見合わない退職金制度が起こす“払えない”トラブル

退職金制度は、時々、“遠い昔に決めたまま放置”しているケースがあります。特に、景気が良く、業績が急成長していた頃の制度をそのままにしているようなケースでは、退職金が非常に大きな“額”に達するケースもあります。

そうでなくとも、一般に『実際に退職者が出るまで、退職金のことは真剣に考えていなかった』というケースが多く、問題が必要以上に深刻化する場合もあります。特に退職金制度は、現在の情勢に合わせた見直しに取り組んでおかなければ、いざという時、思わぬトラブルを招いてしまいがちなのです。

トラブル事例5:高齢者の賃金体系の見直し

『たとえ賃金が下がっても、会社に勤めていたい』という高齢者の皆様は、決して少なくありません。会社としても、肉体的な重荷を軽減しながら、高齢者の見識を仕事に生かしてもらうのは、大変有効でしょう。

しかし、賃金の引き下げは、むやみにできるものではありません。もし“規程がない”とか、“合法的な数の社員の同意がない”等の指摘がなされると、賃金引下げ自体が難しくなるケースもあり得るのです。とにかく人事問題への取り組みは、可能な限り“合法的に制度化”しておくこと、これが何より重要な基本になるのです。